前回の続き産科8日間の光と影
32週の妊婦検診で、そのまま緊急帝王切開へ。
けれど、何日もおしっこが出ないまま
『今出来るのは、この治療しかない』
お腹の中に管を入れて、動かない腎臓の代わりに不要な水分や老廃物を体の外へ出してやる、腹膜灌流を受けました。
最後と言われた治療をした翌日も、
わずかに水分は引けたものの、
まだおしっこは出ませんでした。
出来る限りの治療をしても、壊れてしまったかのように動かない臓器。
日に日に紫黒く、どんどん浮腫んでいく娘を見て、私達夫婦だけでなく親や周りの人、
そして恐らく主治医の先生も、
誰も口にしなかったけれど、
命の残り時間はさらに短くなって、今もそこに向かって時を刻んでいる…
心によぎるものがあったと思います。
『抱っこさせてほしい』
そうお願いし、色んな管がつながる娘を慎重に保育器から出して、
主治医の先生が酸素を持って見守るなか
生まれて9日目、
初めて娘を抱っこしました。
体重は1908g、浮腫んでいるのも加わってずっしりとした重みがありました。
それから数日して、
おしっこが出たのです。
噴水のように勢い出て、おしっこを貯める袋がいっぱいになってる…
生後13日目 NICU日記
おしっこが出るようになって、体重1678gで減少している。減って喜ぶのはウチぐらいかな。おヘソの管が取れて、お腹周りがすっきりした。身体の色も数日前の紫黒色から肌色に。先生から『次は腹膜灌流の管を取る。落ちついたら少しだけ母乳を与え始める予定』と説明。まだ、油断出来ないし、回復しているところまではいってないらしい。でも、ここまでよく頑張ったね。◯○ちゃん。
まだ身体のむくみも残っている紫黒い娘の前で、思いっきりの笑顔の写真。
この写真を見せた人は、
『どうして一見して容態の悪い子どもの前で、両親が最高の笑顔をしているの?』
…不思議そうな反応をします。
人生で一番嬉しかったことは?と
聞かれたら、13年経ってもやっぱりその時のことと答えます。
おそらくこれから先も…
真っ暗な世界に、兆しのように小さな光が見えたから。明るいところでは、気づかず見過ごしてしまうけれど…
お世話になったNICUは、原則子どもの両親のみ入室できるルールでした。
たとえ新米の親でも、若い夫婦でもです。
緊急帝王切開で、親としての準備も構えもまだこれからだったのですが、
私たちの場合は、
返ってそのルールが覚悟を決めて、
自分の子どもの命の、
しかもギリギリの命の、
親として説明を聞き治療に同意していくことが出来たのでよかったかなと思います。
今、当時の写真をみていると、
娘のそばで写る私の顔や後ろ姿から、
日記にも書いてない不安、絶望感や憤りが読み取れるものがあり
本当に非日常の世界を歩いたなと感じています。
続きます